HERO'S 観戦記：命を燃やす男の姿

　“桜庭復活”

PRIDEの英雄桜庭和志が、HERO'Sに電撃参戦した。
しかし御歳３７歳。２０００年のPRIDEのリングでホイス・グレイシーを激闘の末
戦意喪失に追い込んだ、輝いていた桜庭の姿はもうない。

思えば２００１年３月、埼玉スーパーアリーナでヴァンダレイ・シウバの前に
完膚なきまでに桜が散った。それ以来ジャクソン、ドンキーコングなど強豪を
撃破するも、シェンブリにポカ負けをするなど、絶対的な強さはなくなってしま
った。
そして２００３年対シウバ３連続KO負け、２００５年ミドル級GP初戦の対アローナ
では完膚なきまでに叩きのめされた。

　“もう無理なのではないか？．．．”
こう思っているファンは僕だけではないと思う。しかし彼は再びリングに立った。
１ラウンド、２分に満たないところで相手の右フックをモロに喰らにダウン。
ハッキリ言って終わった、と思った。倒れてから意識朦朧状態で相手の足に
まとわり着く姿を見て、シウバとの初戦の姿が脳裏をよぎった。
しかしそこからが凄かった。フラフラしながらも相手の攻撃に耐え、そして
シュートボクセ仕込みのワン・ツー・スリー。これが相手の顔面を捉えた。
そこから桜庭の両の眼は輝きを取り戻し、パンチでダウンを奪ってからの
腕ひしぎ逆十字固めで、逆転勝利を呼び込んだ。
この桜庭の “命を燃やす” 戦いを見て、僕は久々に胸が躍り、ほんとうに
勇気をもらった。

ただレフェリーの試合さばきに疑念が残る１戦だった。
桜庭がダウンし体がちょとロープの外に出ていたとはいえ、なぜあそこで
一旦試合を止めたのか？会場からは “疑問の歓声” が上がったように聞こ
えた。あの場面で止めてはいけない。というか桜庭は既にフラフラで危険な
状態だった。止めるならＴＫＯ負けのジャッジをすべきだったと思う。
先日の亀田の世界戦のジャッジもそうだった。スポンサーへの配慮やその
大会の“顔”を尊重したいイベント関係者の立場は分かる。でも、プロの格闘家
が命を燃やして戦っている舞台で、疑惑の残るレフェリングや不正なジャッジ
をしてはいけない。
それは、その対象となった選手たちの今後の選手生命にも関わってくる問題
だと思う。

最近の格闘技界には、よからぬ話が色々とある。しかしなにはともあれ、
　“命を燃やす男の姿” はすばらしい！